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残り火 After Stage ―未来への灯火―
残り火 After Stage ―未来への灯火―
مؤلف: 相沢蒼依

残り火2nd stage 第1章:今までで一番、熱い夏!

مؤلف: 相沢蒼依
last update تاريخ النشر: 2025-10-05 19:55:53

 待ち遠しかった夏休みがついにやって来る。それを考えただけで自然と口元が綻んでしまい、ひとりでニヤニヤしてしまう顔を慌てて隠すんだ。

 離れているからこそ募っていくキモチとか寂しさとか愛おしさとかが、じわじわと胸の中に広がってしまう。そういう想いを更にぎゅっと噛みしめながら、穂高さんに逢うために今日も頑張っていく――。

***

 島からフェリーを使って本州に渡り、長時間の運転で疲れは幾分溜まっていたが、ハンドルを握りしめながら眺める懐かしい景色に、思わず笑みが零れる。

 そこは自分が住んでいた場所であり、現在も千秋が住んでいるところ。流れていく車窓の中に、千秋が通っている大学があった。今頃、頑張っている最中だろうな。

(――船長の機転に感謝しなければ)

 それは数日前の今時分。漁に行く準備をすべく、船の中に新しい網を引き入れていたときだった。

 頭に巻いていたタオルが何かの拍子に落ちてしまったので、屈んで拾おうとした。それだけなのにバランスを崩してしまい、網の中へとキレイにすっ転んでしまった。

 慌てて起き上がろうと手をついたところに何故か運悪く網がぐるぐるっと絡まり、外そうとしたけど余計なものまで絡まる始末。まるで蜘蛛の巣に引っかかってる、憐れな虫みたいになった。

 身体の奥底で千秋を常に求めてしまい、それをどう表現すればいいか。置き場がないのも違うし、落ち着きがないともどこか違う。とにかく体全体がもう直ぐやって来るであろう千秋に、逢いたくて逢いたくて堪らない状態で、それがアクシデントの原因になっている。

 俺自身はそれをどうすることもできないのが、本当に頭が痛い――。

「井上、おめぇ何やってんだ、そりゃ?」

「すみません、出港前の忙しいときに。絡まってしまいました」

「はぁ!? まったく……。ここんとこ、ありえんバカばっかりしとるがな。何か、気になることでもあるんかえ?」

 船長が絡んだ網を手早く解いてくれた。俺があんなに苦労したというのに、いとも簡単に解くとか、どうしてだろうか? しかも言葉通りなので、反省しても足りないくらいだったりする。

「……あと数日で、弟がこっちに来るのが嬉しくて」

「はあぁ!? たったそんだけのことで、こんなバカやってんのか。呆れてものが言えねぇわな」

(――仰るとおりです、否定しませんよ)

「わーった。んもぅおめぇは使えんから、さっさとおとーとさ、迎えに行って来い!」

「本当ですか!? それは」

 思わず船長の肩に手を伸ばして、激しく揺すってしまった。

「お、ぉおお、おいっ、落ち着げっ! まんずは、先に言うべきことがあるべさ?」 

 愛しの千秋に逢えると喜び、一気に舞い上がってすっかり失念してしまった、船長に対しての礼儀作法。慌てて姿勢を正して、45度に頭を下げた。

「すみませんでした、本当に。反省しております」

「よしよし、それでええ。明日の朝一のフェリーで行くんじゃろ? 今日はもう帰っていいから、ゆっくり休め」

 優しい船長のお言葉に甘えて堂々と休みを戴き、こうして千秋を迎えに来ていたりする。突然現れて驚かせてやろうと考えているので、連絡できないのは実際のところつらかった。

「まぁ、バイトが終わる午前1時過ぎになったら帰ってくるだろうし、それまでどこかで時間を潰すとしよう。まずは義兄さんに、お礼を言わなければいけないか。今回の件について、お世話になりっぱなしの状態だったから」

 大学門前に車を駐車して携帯に電話をしたら、ホストクラブ パラダイスの事務所にいるという返事を聞き、今すぐ行きますと手短に用件を告げて、一路そこを目指したのだった。

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   恋色のバラに永遠の愛を誓って3

    ***「すっかり遅くなりましたね。あんなに長居をしたらお客さんだった場合、たくさんお金を払わなきゃならないんでしょ?」 スマホの時計を見ながら指摘してみたら、隣にいる穂高さんが小さく笑ったのが空気に乗って伝わってきた。「ん……。長居をしてもらいつつ、ドリンクをたくさん呑んでもらわないといけないからね」「だけど長居を感じさせない話の連続で、時間があっという間でした。やっぱりすごなぁ」 感嘆の声をあげる俺を乗せた車は、どこかに向かっているらしい。行き先を訊ねても、いちいち話を逸らすものだから、諦めて違う話題を喋った。 お店で俺たちの馴れ初めを喋らされるんだろうなと、一応覚悟していたのに、ソファに座った途端に始まったのは、土下座をした俺を称賛する言葉だったり、穂高さんが働いていた当時の話など、話題が次々と変わった。 そんな異様に盛り上がってる俺たちのテーブルに、お客様からの視線がチクチク感じるので思わず見返すと、必ずと言っていいほど、とある一点に視線が集中していた。 店内が薄暗い上に、一番奥側に座っているのにも関わらず、女性客の視線を独り占めしていた、赤いシャツを着ていた穂高さん。しかもちゃっかり指名が入っているのをトイレに行く道すがら、大倉さんが断っているのを聞いてしまった。『申し訳ございません。本日彼は商談をしに来ていて――』 なぁんて言いながら断っているのに、何とかしてよってしつこく詰め寄るお客様がいた。 『なーんもしていないのに、いつもよりお客様が多いのはどうしてだ? そこにいるだけで客寄せパンダならぬ、客寄せ元ホストなんてさ。井上、超ムカつく!』 北条さんがややふざけ気味に言っていたけど、その様子は本当に心中複雑になった。彼の人気をこういう所で、改めて思い知る。カッコイイ穂高さんの恋人が、俺でいいのかなって。 そういう気持ちを悟られたくなくて、妙にはしゃいでしまった。穂高さんはそんな俺を、どんな気持ちで見ていたんだろうか。 そのときのことを思い出し、口を噤んで車窓を眺める。するとそこは、見慣れた景色が流れていた。「ここって……」「懐かしいだろ。はじめて千秋と、一緒に来た場所だね」 バイトが終わる俺を待ち伏せしていた穂高さんが、騙して連れて来た高台の中腹。エンジンを切りライトを消すと、辺りは真っ暗闇に包まれた。「さて、と」 

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   ―純血の絆―③ヴァンパイアとしての愛し方3

    「なんていうか……。穂高さんが傍にいてくれるだけで、つらいのがなくなる気がします」 視線を逸らしながら、思っていたことを口にする。下半身の事情で焦っているせいか、さっきまでつらかった吸血衝動が、多少なりとも緩和されていた。「千秋は我慢強いね。俺も見習わなくてはいけないな」 カーテンの隙間から入り込む僅かな月明かりが、穂高さんを照らした。俺の顔をじっと見つめながら、印象的な瞳を意味深に細める表情を目の当たりにして、胸がきゅっとしなる。 それと同時に、栗色の髪も月明かりの加減で金髪に見えるせいで、ヴァンパイアの姿をした彼に激しく抱かれたことを思い出してしまった。「穂高さん……」 妙に掠れた自分の声が、部屋の中に響く。どことなく誘っているようなそれを聞いた途端に、目の前にある形のいい口角の端が上がった。 意味ありげな穂高さんの微笑に、何度も目を瞬かせるしかない。こんなふうに微笑まれる意味が、さっぱり思いつかないからだった。「なぁ千秋、布団の上から抱きしめた時点で君が勃っていることに、ちゃっかり気がついていたんだが――」「えっ!?」「素知らぬふりして、そのままやり過ごせるほど、できた男じゃないんでね」 穂高さんの言葉に驚いて、布団を握りしめていた力が呆気なく抜けてしまった。見ていてそれが分かったのか、次の瞬間には勢いよく布団が剥ぎ取られてしまう。 外気にさらされた躰は、ぬくもりが瞬く間に消え去り、厚手のパジャマを着ていても背筋がぞくっとした。ヴァンパイアの状態でいるときは体温が低いので、寒さが余計に堪える。「君の体温をできるだけ奪わないように、あたためてあげる。こうして――」 手にした布団を自分に背中に被せるなり、俺に跨ってきた穂高さん。そのままゆっくりと包み込むように、躰の上に倒れてきた。「あったかい……」 冷えた躰に、穂高さんの体温がとても心地よかった。俺の頬にオデコをすりりと擦りつけてから、首筋にキスを落とす。「千秋がヴァンパイアだというのに、君の香りを嗅ぐだけで、いつものように吸血したくなる」「えっ?」 いつも俺を吸血するときに噛む場所に、穂高さんの牙の側面が当たって、彼が変身したことが分かった。

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   ―純血の絆―③ヴァンパイアとしての愛し方2

    「君の血が欲しくて来たんじゃない。吸血衝動のつらさを知っているから、少しでも楽になればと思ってね」 まったく触れていないというのに、俺の目を惹きつけずにはいられない穂高さんの姿を見ただけで、下半身のカタチが変わってしまったということが、ものすごく恥ずかしい。 彼はひとえに俺を想って、遠い場所からこうして、わざわざ来てくれたというのに――。 それを知られないようにすべく、両腕で布団を引っ張った。妙な振動を与えないために、躰を緊張させて強張らせる。「千秋、相当つらそうだね。呼吸もかなり荒くなってる」「ええっ、えっと布団の中にずっと引きこもっていたから、酸素が足りなくなっているのかもしれないです。……多分」 首から下は完全に布団の中に入ってる。穂高さんに布団を剥ぎ取られなければ、俺が勃っていることは知られない。「ヴァンパイアの姿でいるのは、寒くないかい? 俺が布団の中に入って、抱きしめながら温めてあげよう」 布団の上から抱きしめていた俺の躰を放し、立ち上がって両目を閉じた穂高さんは、次の瞬間には人間の姿に代わっていた。「だだだ、大丈夫ですよ。しばらく布団の中に入っていたので、そこまで寒くはありません。本当に!」「俺はもともと体温の低い男だから、もしかしたら千秋の熱を奪ってしまうかもしれないね。それが分かっているから、そんなことを言って断っているんだろう?」 眉間に皺を寄せた顔を近づけて、「他にできることがあるだろうか」なんて言われたら、断ることなんてできやしない。

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